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忌野清志郎の頭の中(1)ロック、そしてラブ&ピース。 [音楽(忌野清志郎)]

忌野清志郎は、不思議な人だ。
正義を訴えたかと思うと、
ただの悪ふざけにしか思えない行動もとる。
怒りに満ちたプロテストソングを歌うかと思えば、
繊細なラブソングも歌う。
マスコミを批判することもあるが、
TVにも出る、CMにも出る、俳優にもなる。
ヒーローに見えたりヒールに思えたり、
ただのダジャレ好きのオヤジになったりもする。
この一貫性のなさは何だろう?

清志郎に「活動のモノサシは何だったんですか?」と
問いかけると、「そんなものはないんだよ、
ないほうがかっこいいだろう、それがロックだろ」
そんな答えが返ってきそうな気がする。
清志郎を、あえてひとつの言葉で
括るとすれば、それは間違いなく「ロック」だろう。
政治的メッセージや思想を持って
活動していたのではなく、
ロックのバンドマンとして、
やりたいことをやって、歌いたいロックを
歌っていただけなのだと思う。
清志郎のプロテストソングについて、泉谷しげる氏は、
このように書いている。

 ああいう反原発とか反核といった歌詞について。
 さんざん会って飯食って話していても、あいつは社会が
 どうだという話はまったくしたことがなかった。
 一度だってなかった。逆にオレがその手の話を
 ふっても、彼は「う〜ん、そうか、たいへんだな。」と
 他人事みたいに言ってた。(泉谷しげる)

    「ぼくの好きなキヨシロー」(WAVE出版)より


ただ、音楽、特にロックへのこだわりには
すごいものを感じる。
清志郎は、かつて(80年代後半)、日本のロックと呼ばれていた
音楽が大嫌いだったようだ。
歌いたいことを歌う、
歌いにくいことを歌う、
歌ってないことを歌うことで、
これがロックだ!と訴え続けていたのだろう。
反戦歌も反核の歌も、ラブソングも同じように歌った。
童謡も国歌も、ロックにしてみせた。
そのロックを阻止しようとするものとは、とことん戦った。
思想と戦ったのではなく、権力と戦ったのだ。
その権力とは、歌いたいロックを歌えないようにする
マスコミや音楽業界だ。

 忌野清志郎「どいつもこいつもロックとか言って
       髪の毛ブっ立ててさ、この街から出ていこうとかさ、
       言ってるわけじゃんよ。恥ずかしいよな、あいつら。
       そんな奴ばっかりだから、政治的なことを歌ったり
       するのはですね、カッコいいと思いましたね」
 渋谷陽一 「とりあえず忌野さんにとっては、
       政治的メッセージというよりは、
       何か人のやってないことを
       やりたいみたいな、そういう要素が強いと」
 忌野清志郎「うん、そういう要素も多分にあると思う。
       いつもそうだったし」
              (中略)
 渋谷陽一 「政治的な行為そのものをカッコ悪いと思っていた
       忌野清志郎が今、何故?」
 忌野清志郎「当時みんながやってたからカッコ悪いわけで
       あってね。今誰もそんなこと歌ってないの、
       だから俺は歌ってんだ。もし、まわりに
       そんなヤツがいたらカッコ悪いと思うよね。」

        「ロッキングオンJAPAN特別号」カバーズインタビューより


 今井智子 「カバーズでは、たまたま反原発の歌が
       クローズアップされたけれども、歌いたかった
       ことはそれだけではなかったんでしょう?
 忌野清志郎「そうそう」
 今井智子 「何だったんでしょう?それは」
 忌野清志郎「だから、それは、今やロックが忘れてしまった
       歌う内容をさ、もう一回、自分で歌いたかったんだよね。
       自分が聴いて育った、戦争反対とかさ…(略)」

          「清志郎が教えてくれたこと」より


かたくなにロックであり続けようとした清志郎だが、
それに反するような行動もあった。父親としての顔を見せる時だ。
子どもをステージに上がらせたり、一緒に
レコーディングしたり、絵本をつくったり。
子どもが生まれてからは、ロックンローラーで
あることを忘れたかのような言動も目立ちはじめた。
その変わりように失望し、離れていったファンが
たくさんいると聞いている。
しかし、私は、清志郎のこの人間らしい
部分が大好きだった。
敬愛するオーティスレディングをマネてはじめたという
「愛しあってるかい?」の呼びかけ。(過去記事
それも、最初は単なるパフォーマンスであったのだろうが、
いつの日か、ひとりの父の切なる願いへと変わったはずだ。
人と人が愛しあっていれば、争いごとなんか
起こらない。次の世代のために、掲げようラブ&ピース。

忌野清志郎の頭の中には、政治的メッセージや思想なんて
何もなかったはずだ。
あったのは、ロックへの強い思いと、
ラブ&ピースだったと思う。


ROCK ME BABY(作詞:忌野清志郎・三宅伸治)

宗教も思想もいらない
俺は何も持たない
ロックンロールの神様 
俺にはついてる
ここにおいでよ今すぐに
争うことはもう止めておくれ
(以下、略)   (全歌詞)(you tube

(敬称略)



2へ続く




(以下の本から引用させていただきました)



Dreams to Remember~清志郎が教えてくれたこと

Dreams to Remember~清志郎が教えてくれたこと

  • 作者: 今井 智子
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2009/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



忌野清志郎1951-2009

忌野清志郎1951-2009

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ロッキング オン
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本



ぼくの好きなキヨシロー

ぼくの好きなキヨシロー

  • 作者: 泉谷 しげる
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2009/10/17
  • メディア: 単行本



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