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忌野清志郎の頭の中(6)ちょっとした悪ふざけじゃねえか! [音楽(忌野清志郎)]

平和ボケといわれた日本人の心を突き刺すかのように、社会の暗部を
歌い続けたタイマーズ。ZERRY(忌野清志郎)は、その歌で
社会を動かそうとしたのではなく、たんに社会を歌いたかっただけ。
「善」と思われようが、「悪」と思われようが、どっちでもよかったのだ。

忌野清志郎「オレは歌で意味が伝わるとは思っていない。伝わるヤツは
      いるだろうけどさ。わけもわからず踊ってるだけのヤツもいる」
今井智子 「そうすると、一部には伝わるという可能性に賭けるわけですか」
忌野清志郎「そうそう。それと、やっぱり自分が歌いたいというのがある」

          FMファン89年インタビュー        
         「清志郎が教えてくれたこと」より


そして、タイマーズは、「善」だ!「悪」だ!と
議論するファンを尻目に、さまざまな騒動を起こしている。


広島ピースコンサート
88年、まだ活動が本格化していない頃だが、
「広島ピースコンサート」にシークレットゲストとして出演。
堂々と「善」を掲げたチャリティコンサートでこんな歌を歌っている。

偽善者

偽善者 偽善者 あいつは偽善者
支配者 支配者 俺は被害者
犠牲者 犠牲者 あんたも犠牲者
司会者 司会者 テレビの司会者

偽善者は 歌うよ
世界の平和を求め
理解者はいないよ
ででくる奴らは みんな偽善者
全歌詞)(you tube)(you tube登場シーン)

あきらかに、このコンサートに向けてつくった歌だ。
しかも、「司会者」という言葉の後、
ライブでは、「コータロー」と叫んでいる。
(この日の司会は、山本コータロー)。
タイマーズのこの行為については、賛否両論。
やりすぎだ、大人げないという批判もあったようだ。


エースコック事件
食品メーカーエースコックが、CMに
タイマーズの「ディドリームビリーバー」を起用した。
クライアントを誹謗することはダブーなはずだが、
こんな曲をつくりライブで演奏した。

エースコック ぶたぶた 子豚
エースコック お腹がすいたな
でもあんまり食うと 体に毒だぜ
エースコック 化学調味料
(略)(参考


FM東京事件
タイマーズのお騒がせ事件で、もっとも有名なのはこれだろう。
清志郎は、以前にテレビ番組「夜のヒットスタジオ」で
ガムを噛みながら登場し、ガムを吐き出したことが
あるが、それをさらにエスカレートさせたような事件。
「ヒットスタジオR&N」出演時、
リハーサルでやっていた曲「偽善者」を、
本番で違う曲にすり替えて演奏したのだ。

FM東京 腐ったラジオ
FM東京 最低のラジオ
なんでもかんでも放送禁止さ〜
FM東京 汚ねえラジオ
FM東京 政治家の手先
なんでも勝手に放送禁止さ〜
you tube)(you tube)

これは、清志郎作詞のティアドロップスの曲「谷間のうた」をFM仙台が、
タイマーズの「土木作業員ブルース」をFM東京が放送自粛していた
ことに抗議した行動だと言われている。(参考


福岡断水事件
ユニバーシアード福岡大会の前年(94年)に、それを記念する
コンサートが開催された。当時福岡市は異常な渇水に見舞われて、
5日後には断水に突入する予定だった。
タイマーズの登場前に、「福岡市渇水対策本部からの連絡です。
江川ダムでトラブルが発生、完全断水に入るので、
コンサートも中止します」とアナウンス。
慌てた観客1000名が、そのまま帰ってしまい、
市の水道局にも問い合わせの電話が殺到した。(参考

この騒ぎの後日談は、「ミュージックマガジン増刊/永遠のバンドマン」の
近藤康太郎氏のコラムに、雑誌マルコポーロの記事が紹介されている。
それによると、この騒動に、福岡市は猛抗議。
事務所とタイマーズのメンバーによる連名の謝罪文提出により
丸く収まったそうだ。
ところが、ZERRYは、もうひと騒動起こす。
1ヶ月後の大阪でのコンサートで、
「謝罪文なんて書いてねえよ、福岡市が
スタッフをおどして、タイマーズの名前を使って
書いたんだ」というような歌を歌い、
またまた福岡市を激怒させた。


このように、さまざまな騒動を起こし、
世間から、そして一部のファンからも批判された
清志郎であったが、
本人は、ちょっとふざけただけで、
そんなにたいしたことではない、という認識だったようだ。
ZERRYやタイマーズは、善でもない悪でもない
正体不明の過激なヤツらという設定だったろうし、それに
成りきっていただけ。歌詞だけではなく
言動でも騒がしてやろうと狙っていたのではないか。

不意をつく出来事だったので、
関係者も、その場は、驚いたり、怒ったり、
立場によっては、たいへんだったろうが、
結局は、タイマーズにしてやられた、
ぐらいの感覚で、済んでしまったのでは
ないだろうか。
もしかすると、想定内、承知の上だった、
という関係者もいるかもしれない。

タイマーズは、次の年も「広島ピースコンサート」に出演している。(you tube
そして、FM東京(TOKYO FM)は、長年にわたって清志郎の音楽を
サポートし続けた。歌でこき下ろされたエースコックも、再度、
清志郎の曲をCMに起用している。
FM東京事件に関して、忌野清志郎はのちのインタビューでこう
答えているそうだ。

 実はテレビ局は大喜びだったんですよ。怒られるかなと
 思ったけど、プロデューサーとかニコニコしてました。
 苦情が殺到して反響があった……(忌野清志郎)95年VIEWS
 
             「永遠のバンドマン」近藤康太郎氏コラム
         「ボスのお騒がせ事件簿」より

これを言葉通りとらえていいのかどうか?という疑問もあるが、
放送局に、そんなにダメージはないように思う。

タイマーズの騒動は、かつてないインパクトのある出来事だったので、
マスコミが大騒ぎした。そして、みんなそれに煽られた。
でも、そんなに大きな事件なんだろうか?
ようするに、みんな、タイマーズに踊らされたのだ。

(敬称略)



7へ続く





(以下の本を引用、そして参考にさせていただきました)

忌野清志郎 ~ 永遠のバンド・マン ミュージックマガジン

Dreams to Remember~清志郎が教えてくれたこと 今井 智子
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