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父が残してくれた本(その4)角田光代「三面記事小説」。 [本]

父が最後に読んだ本は、「顔のない刑事」なのかもしれないと
ブログに書いたが(参考)、それより後の発行日の本が出てきた。
2010年の9月10日第一版。父が入院するふた月ほど前だ。

しかし、意外だなあ。父が角田光代さんの本を読んでいたなんて。
他は出てこなかったんで、これ一冊だけのようだが、
どういう経緯で購入したのだろう。
どちらかというと父は古いタイプの人間。
自分より下の世代の作家さんの本なんて、見向きもしないと
思っていたけど。晩年は、ほとんど家の中で過ごしてた
ようだし、読書が楽しみだったんだろうな。
いろんな作家の本を手にしていたのかもしれない。

で、「三面記事小説」。実際にあった事件(三面記事)をモチーフに、
角田さんがその裏側、背景を創作したフィクション(短編小説)集だ。
各章の最初に、ストーリーの結末とも言える新聞記事が載せられて
いるので、いわゆるオチが最初にわかってしまう。
だから、オチに至るまでの過程を楽しむ小説。
なぜそんな事件が起こったんだろう?という謎解きの
ようなものを楽しむ小説といえるのかもしれない。
ただ、私は、オチがわかるとおもしろくないと思ったので、
1章以降は、その記事を見ないで読んだ。

収められた6つのストーリーは、いずれも非常に悲しい事件を
元にしたものだ。人間が、どんどんと落ちていく様を綴った小説でもあり、
読んでいると、とても辛い。そして、読後は悲しい気分になった。
介護をテーマにした「光の川」は、読んでいて気分が悪くなったので
最後まで読むことができなかった。
まあでも、逆に言えば、人をグイグイと引き込むチカラを
持った小説だと思う。
ひとつの三面記事から、こんなにおもしろい話をつくれるなんて、
すごい作家さんだなと感じた。

とても、おもしろい小説。でも、ハッピーエンドが好きな人、
心が疲労気味な人にはおすすめできない。

父は、心身ともに、弱っていただろうし、
この小説は、ちょっとハードだったんじゃないかな。





三面記事小説 (文春文庫)

三面記事小説 (文春文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09/03
  • メディア: 文庫





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