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萩原浩「神様からひと言」。 [本]

いつ買ったのか記憶にないのだが、事務所を掃除していたら、
ひょこっと現れた文庫本。裏表紙のあらすじをみると、
「大手広告代理店を辞め、珠川食品に再就職した佐倉〜」と書いてある。
この広告という文字が目にとまって購入したのだと思う。

その広告の話が出てくるのかな、
と思いながら読み始めたのだが、いきなり販売促進課の
ネーミングのプレゼンの話。物語には、
スーッと入り込むことができた。
それは良かったのだが、
なかなか前へ進むことができない。
なんとなく読みづらいのだ。
この作家さんの小説を読むのは
はじめてだったが、文章は軽めで、独特の比喩表現を使う人。
セリフに続く心の声や情景描写がやたらと長かったりする。

「あ、そ。僕は聞いてないよ」。
喧嘩を売っているのか? ムカついたが、黙ってまたビール瓶を末松の
コップに傾けた。昔の涼平なら、この時点でビール瓶のネックの方を
握っていただろうが、社会人になって5年。サラリーマンには絶望的に
向かないと言われてきた涼平にだってそのくらいの我慢はできるようになった。
大いなる進化。類人猿が直立歩行を覚え、石器を手にしたような。

と、いうように。
だから、時には、話がなかなか前に進まないときがある。
しかも、次の章や、ちょっとした区切りが
なかなかやってこないので、休憩できないし、疲れるのだ。
でも慣れてくると、なかなかおもしろい。
小説というより、エッセイのような文を書く人だなあ。
ブログでこういう文を書く人、たまにいる。

で、ストーリーとしては、広告業界の話ではなく、
リストラ要員になった社員のたまり場「お客様相談室」を
舞台に繰り広げられるサラリーマンのドラマ。
リアリティはあまりないが、クレーム処理の方法が
見事で、実際の現場で使えるのではないかと思った。
私は、サラリーマンとして働いていた期間が短かったし、
広告プロダクションや広告代理店というちょっと変わった環境に
いたので、サラリーマンの心情はよくわからないのだが、
「サラリーマンに元気をくれる物語」という帯のコピー通りの
小説なのかもしれない。

解説を見ると、この作家も、元コピーライター。
前にも書いたが(過去記事)、元広告マンの作家さんって、
ほんとに多いなあ。




神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/03/10
  • メディア: 文庫





タグ:萩原浩
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