1972年がデビューだから、今年で43年目。なのにアルバムは
14枚しか出していない。寡作なアーティストの代名詞のような人だ。
新しいアルバムのタイトルは、Standing in the Breach。
Breachとは、裂け目、穴、破損のこと。
2010年のハイチ地震にインスパイアされたタイトルだそうで、
ジャケットには、その地震で被害の大きかった首都ポルトープランスで
撮影された写真が使われている。



その写真から連想される言葉は、怒りや悲しみ、失意。
暗くて重く、そして激しいサウンドのアルバムなのだろうと
思ったが、聞いてみるとその逆だった。
一曲目からどことなく懐かしいロジャーマッギン風の12弦ギターの音色が。
そして、この人独特のあのやさしいメロディラインとあの声が流れてきて、
アレッという感じでちょっと拍子抜け。(実は、その方がうれしいのだけどw)
その後も、次から次へとジャクソン節が満載で、
These Daysを思わせる曲や軽快なカントリーナンバーも収録されていた。

一番の変化は、レコーディングメンバー。
ジャクソンブラウンは、1993年のアルバム「アイムアライブ」の頃から、
ツアーバンドを固定し、レコーディングもそのメンバーで行っている。
曲のクレジットを見ると、メンバーの名前が含まれていたりするので、
曲づくりも一緒に行っていたのだろう。
ということは、「ジャクソンブラウンバンド」という一つのバンドがあって、
ジャクソンも実質そのメンバーの一員だったのではないかと思う。
このアルバムは、20年間活動を続けてきたジャクソンブラウンバンド
解散後の初めてのアルバムということになる。

今回のレコーディングメンバーは、
前バンドメンバーのMark Goldenbergをはじめ、Mauricio Lewak、
ベテランJim Keltner、かつてのツアーメンバーBob Glaub、Doug Haywood、
Luis Conte、トムペティ&ハートブレイカーズのBenmont Tench、
日本でも人気のベーシスト「タルちゃん」ことTal Wilkenfeld。
そして、今度のツアーメンバーの肝である二人のギタリスト、Greg Leisz、
Val McCallumなどなど。

これだけのメンバーをそろえたら、サウンド面は悪くなるはずは
ないわけで、一曲一曲のクオリティは、かなり高いと感じた。
ここ最近のジャクソンブラウンのアルバムの中では、
個人的にはこれがベストだと思う。




スタンディング・イン・ザ・ブリーチ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2014/10/08
  • メディア: CD




CROSSBEAT Special Edition ジャクソン・ブラウンとカリフォルニアのシンガー・ソングライターたち (シンコー・ミュージックMOOK)

  • 作者: 五十嵐 正
  • 出版社/メーカー: シンコーミュージック
  • 発売日: 2015/03/06
  • メディア: ムック