忌野清志郎さんには、十八番ともいえるフレーズがあった。
「愛しあってるかい?」。清志郎さんは、ライブの終盤になると、
必ず観客にそう問いかけていた。それはジョンレノンが掲げた
ラブ&ピースの思想と同じ。人と人が愛しあっていれば
争いなんておこらない、戦争なんてなくなる、というメッセージだ。

清志郎さんは、かなり昔から、このフレーズを口にしているが、
当初からそんな強い思いが込められていたか、というと
それは疑問だ。このフレーズには、実は元となるものがある。
敬愛するビッグオーことオーティス・レディングの言葉
「We all love each other, right ?」だ。

その昔、おそらくNHKのヤングミュージックショーだと思うが、
オーティスの伝説のライブ映像(1967年のモンタレー・ポップ・
ポップ・フェスティバル)が放映されたことがある。映像の中に、
観客に「We all love each other, right ?」と問いかけるシーンが
でてくるが、その言葉の日本語字幕が「愛しあってるかい?」
だったそうだ。

元々、パロディがとても好きな清志郎さん。
オーティスの映像を見て、
なかなかかっこいい言葉じゃないか。
オレも、オーティスみたいに「愛しあってるかい?」って
語りかけてみよう。と、そんな感じで
はじまったのではないだろうか。



Otis Redding live @ Monterey
We all love each other, right ?
「I've been Loving You Too Long & Satisfaction」




そして、いつしか
清志郎さんは、その言葉に強い思いを込めるようになった。
争いごとのない平和な世界を願うようになった。
なぜ、そうするようになったのか?
それは、ラブ&ピースを説くもうひとりのアーティスト、
ジョンレノンと同じなのでは
ないだろうかと思う。

少し前になるが、ジョンレノンの写真展があって、
そこでオノヨーコさんのメッセージを目にした。
そこにはジョンレノンがなぜ「ラブ&ピース」という
メッセージを訴え続けたか、その理由が綴られていた。

「それは、とても単純なこと、ジョンが父親だったからです。
みなさんが家族を愛するように、ジョンも家族を愛していた。
その家族が安心して過ごしていける未来をつくりたい、
と考えた。ただそれだけなんです。」と、
そんなような内容だったと記憶している。

ロックミュージシャンでありながら、
親バカで子煩悩、そしてラブ&ピース。
忌野清志郎とジョンレノンの共通点は多い。

清志郎さんが「イマジン」を見事にカバーできたのは、
作者の思いを痛いほどよくわかるからだと思う。



忌野清志郎 IMAGINE