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娘を亡くした、その日から。 [亡き娘のこと]

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娘と過ごした一年八ヶ月、その間、ずっと思っていたことが
あります。それは不安というか、恐怖に近いものでした。
娘は近い将来、この世からいなくなる。もし、その時がきたら、
自分はどうなってしまうのだろう。ひょっとしたら、
もうダメになってしまうんじゃないだろうか?
ハッピーじゃないのに、ハッピーな広告なんてつくれない、
そんな言葉を残してこの世を去った広告マンの大先輩もいましたが、
コピーライターという仕事は、自分の精神状態がかなり
影響される仕事だと感じています。大きな悲しみをかかえながら
文章なんて書けるわけがない、そう思い込んでいました。

でも、実際はそうではありませんでした。
娘の通夜、葬儀で、涙がかれるほど号泣してからは
気持ちが落ち着いたのです。
結局、娘の葬儀を終えた3日後に、仕事に復帰。
しばらくは辛い日々が続きましたが、仕事に没頭し
いままで通り、こなすことができた。
その後も、ミスをすることもなく、
今も、普通に仕事を続けています。
私は、人と比べて精神面が強い人間という
わけではありません。くじけそうになったり、
実際、くじけてしまったこともあります。
そんな人間がなぜ、ふつうに仕事に復帰できたのか。
それは、おそらく、娘に関する事で、
悔いを残さなかったからだろうと思っています。

娘が短命であることを知らされたとき、
私は父親として、できることすべてをしようと、
心に決めました。仕事をやめる、仕事を休む、
いろんな選択肢がありましたが、経済状況、そして医療費の
ことを考えると、やめるわけにはいかない、
自営業なので休暇もとれない。でも、
可能な範囲でできることはいっぱいある。
それを精一杯やればいいじゃないか。そう考えました。
仕事を調節しながら、娘の育児・介護に時間を
費やす日々。休みの日は、完全に父親業に専念しました。
父親としてやるべきことをやった
これ以上はできなかっただろうという、
その気持ちが、娘亡き後の自分を支えたのだと思います。

そして、もうひとつ。
仕事に復帰してから、私はひとつの目標を立てました。
仕事がひまなとき、ひとりでボーっと事務所にいると、
きっと娘のことばかり考えてしまうだろう。
そう思い、やるべきことをつくったのです。
愛する人を失ったとき、カメラマンは写真集を残す、
画家は、絵を描く、ミュージシャンは曲をつくる。
コピーライターの自分には、なにができるだろうか。
そこで頭に浮かんだのが、一般公募による広告賞、
毎日広告デザイン賞です。
娘のことをテーマにひとつの意見広告をつくろうと決め、
仕事の合間に、そんな目標に向かって時間を費やした。
いまふりかえってみると、このことも
大きなプラスになったのではないかという気がしています。


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(少しだけ追記。)

私の場合、ある覚悟を胸に生活をしていました。
しかし世の中には、ある日、突然、愛する人を
失う方もいます。そんな方たちの悲しみは、
はかりしれないほど大きなものであると思います。
そんな方にかけるいい言葉は見つかりません。

大切な人と、けんかしたり、疎遠になったり、
離ればなれになったり、いろんなことがあると
思いますが、もしその人がかけがえのない人ならば、
その絆を大切に、時間を大切に、そう願うばかりです。
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